前回は、幼かった私とチーコのかくれんぼ風景でした。
それは遡ること半世紀以上 ずっとずっと昔の思い出の場面。
当時のチーコを文字に起こし始めると、私の記憶の
深い部分に眠っていたチーコがムクッと起き
元気に走り回りだした、そんな不思議な感覚になったのでした。
今日はそんなチーコからは「言わんでよ(訳:言わないで)」と
嫌がられそうな、チーコにとっては少し不名誉な思い出話 第2話です。
元気で愛らしいチーコはオスのコッカスパニエル。
番犬からは程遠く 見ず知らずの人にもしっぽを振り
“番犬”の期待には一切応えなかった。
もっと言えばオス犬チーコは 誰かを守るより
自分を守ってくれという、とびっきりの怖がりで、臆病な犬だった。
チーコは家の敷地内、裏庭の二か所に柵をすることで逃げだせないよう囲い、
リードには繋がずの状態で飼っていた。
そこでのチーコは、大きな音がとびきり苦手だった。
家の近くで工事があっていた日 建物を壊し崩れる音が日中続いた。
その日のチーコは、逃げ場のない恐怖に、ひきつり慌てた表情で、
外に出た私めがけて、ダッシュで駆け寄り抱っこをせがんだ。
ある日、家の上空をヘリコプターが旋回していた、
当然、大きなプロペラ音に辺り一面覆われたのだったが
チーコは生きた心地がしなかったのだろう、
「助けてくれ!部屋に入れて!」とばかりにガシャガシャと爪を立てながら
台所の扉を叩き、全身からのSOSの大アピール。
又荒れた天候の日の稲妻と稲光、とどめは雷音。
これはもう無理、怖すぎる。
怯えおののくチーコにとっては、ピカッと光る稲光は恐怖の幕開け、
雷音はおぞましい地獄への誘いの様に聞こえていたようだった。
その度ごとに、「怖かったね」と震えるチーコを私は抱きかかえていた。
天候が落ち着き、下におろそうとする私に
恐怖の余韻から抜けきれないチーコは「まだ怖い!」とばかりに
膝にしがみつき、頑として降りようとしないのだった。
そんな怖がりで臆病なチーコは
当時小学生女子の私が守るべき存在だったのだ。
番犬には決してなれない愛犬、
その存在は少女時代の私に 「愛おしい」という感情を芽生えさせ
事あるごとに うろたえ恐がる姿を見せ「どうにかして」と訴えては
否応なしに私の母性本能を育ててくれたのだった。
第三話は
そんな臆病犬チーコの グッドなアシストのお話です。